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ヒデとマダムの問わず語り 〜好きにさせてよ〜

とあるアンダーグラウンドなバーのオーナー「ザマさん(ヒデ)」と70年代生まれの通称「マダム」が、アート中心に好き勝手語るバーチャルサロンです。よろしくどうぞ。

マダムのショートショート 〜The Low 3〜




雀の剥製は小さくて軽い。



ブツを受け取る為に入ったオフィスではスキンヘッドの用心棒野郎が居眠りを漕いでいて、こいつとも一悶着あったのだが、話したところでどこにも救いはないのは分かり切っているので省くことにする。

底辺の、底辺による、底辺の為の言い争い。



俺は港に向かうことにした。




雀がちゃんと「そこにいるか」、時々ポケットに手を入れて感触を確かめる。柔らかな羽先が肌を撫でる。よしよし。こいつがなくては話にならない。



通りに出ると、海風が潮の香りを運んでくる。



海は嫌いだ。



昔、俺には8つ年上の兄貴がいたが、台風の日に波乗りをしに行って、死んだ。

引き揚げられた死体を見て親父は泣き崩れ、オフクロは半狂乱になった。モノホンのキチガイになるのに、たいして時間はかからなかった。

今も精神病院から出てこられない。



モニターの女に言われた波止場の店なら既に見当が付いている。万年開店休業中で、アル中一歩寸前の私立探偵、それが俺。


店のドアを開けて中に入った、
いや驚いたね俺は。


ぐうの音も出ないような素晴らしい出っ尻がこっちに向いている。俺に向かって。

俺は暫く阿呆みたいにして突っ立ってた。
こんな尻、次はいつ拝めるかわからない。

思わず手を合わせそうになった時、出っ尻の持ち主が上半身をよじってこちらを振り向いた。


「難しい局面なのよ、今」



女はビリヤード台に屈みこんでおり、台を囲んで数人の客が台と女を交互に見比べていた。



往年の名ゲーム、8ボール。




「俺で良ければ代わりに打ちますよ、レイディ」



言った側から後悔したが、この尻を目にした後では仕方がないことだし、俺に付ける薬がないのは生まれた時からわかりきってることだ。


俺はカウンターに上着を置いた。