ヒデとマダムの問わず語り 〜好きにさせてよ〜

とあるアンダーグラウンドなバーのオーナー「ザマさん(ヒデ)」と70年代生まれの通称「マダム」が、アート中心に好き勝手語るバーチャルサロンです。よろしくどうぞ。

ヴィスコンティでB2B(Back to Back)


【マダム】 昨日からマーラー漬けです。


グスタフ・マーラーはこの曲を愛するアルマに書きました。あまりにも甘美なこの交響曲は、『ベニスに死す』でも使われています。


【ヒデ】 『ベニスに死す』を観たときに、なんて美しい曲なんだと感動しました。
アルバムも買ったものの結局、アダージョしか聴きませんてしたが。


ジム・ジャームッシュの『コーヒー&シガレッツ』でも使われてました。


クラシックはあまり聴かないけれど、映画でとりあげられたレコードやCDは買ったりしてましたよ。


ブラームスはお好き』のブラームス交響曲3番、『愛と哀しみのボレロ』のラヴェルの『ボレロ』、
『ヤング・ジェネレーション』の交響曲第4番イ長調『イタリア』、『鬼火』のエリック・サティ

地獄の黙示録』の『ワルキューレの騎行』、『恋人たち曲/悲愴』の『ピアノ協奏曲1番』、
2001年宇宙の旅』の『ツァラトゥストラ はかく語りき』と『青きドナウ』などなど。


映画から教わることはたくさんあります。



【マダム】 へえ!コーヒー&シガレッツでもマーラーが?いい映画ですよねぇ、あれも。

この雰囲気・・・!


ブラームスはお好き』は、サガン原作ですね、個人的にサガンの作品の中でも特に好きな一冊です。


って今改めて調べたら、主人公のポールは39歳の設定かぁ、これは響きますね…。

酸いも甘いも嚼み分けた歳上のオジサマ恋人ロジェと、付かず離れずの『自由で気楽な』ー、だけど孤独も漏れ無くついてくる、
あの手の関係を続けてきた39歳独身女の前に、素直でひたむきで可愛い25歳の男・シモンが現れる。


やがて2人は同棲を始めるが、いつしかすれ違ううち、女は元の古巣へ、、
だけどロジェは自分が戻ってくるとわかった途端、火遊びを再開、


去りゆく若き恋人の背中に呟くのは、

「シモン、だって私、もうオバさんなのよ、オバさんなの…」

という、自身への戒めともとれる台詞。
これはヒリヒリする!

2017年のジャポンで読んでも全く遜色ないんですがこれは。

ブラームスはお好き (新潮文庫)

ブラームスはお好き (新潮文庫)


【ヒデ】 遜色ないね。




人間、そして人類のドラマをドライブする「クラシック」

で、『愛と哀しみのボレロ』!

昨年上映してましたよね〜、観たかったなぁ。音楽しか知らないですよ。



地獄の黙示録』ときたら次は『プラトーン』でしょう。


プラトーンではバーバーの『弦楽の為のアダージョ』が使われてますね、あの名場面…!
人間と、戦争の愚かしさに胸がかき乱されるあのシーン。

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【ヒデ】 大林監督 山口百恵 三浦友和主演の『振り向けば愛』にも、ブラームス交響曲3番が使われてたはず。

『コーヒー&シガレッツ』念のため確認してみたら、マーラーの歌曲「私はこの世に忘れられて」の一節だった。
5番のアダージョだったと思い込んでいましたよ。

プラトーンも印象的だったね。


『愛と哀しみのボレロ』は、グレンミラー、ルドルフ・ヌリエフ、カラヤン、ピアフをモデルにした二世代のそれぞれの物語。

第二次世界大戦を経て、ラストでラベルのボレロ終結するところが感動的です、
これで僕はベジャールの20世紀バレエ団を知りました。

20世紀バレエ団のスーパースター、ジョルジュ・ドンがヌレエフ役をやっていました。


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【マダム】… すごい。このダンサー自体がまず素晴らしいですね。魅入られてしまう。

まるで、秘境の地で、絶世期の孔雀が舞っているのを、こっそり垣間見ているような気分。

これがその映画のワンシーンなのね。

途中歌で入ってきたのがピアフ?
ゾクゾクしましたけど。

美しい。。なんと美しいのだろう。。

【ヒデ】 これがラスト。
踊っているのがジョルジュ・ドン、エイズで亡くなってしまいましたが。
このベジャールが振り付けたボレロは、女性も全く同じ振り付けで踊れるようになっています。

ピアフ役をやっているのは、ジェラルディン・チャップリン
チャップリンの娘なんだよね。

【マダム】 え!これチャップリンの娘なんですか!?色々と凄過ぎ。主役がエイズで死んだ、って、
確かヌレエフ自身もエイズで亡くなってましたよね。

【ヒデ】 あくまでフィクションなんで、現実には一同に会してはいないのですが、ナチに協力したカラヤンが、
戦後ニューヨークでコンサートを開催したとき、ユダヤ人が席を買い占めて、観客がいなかったなどの事実を織り交ぜて作っています。


でもこの『事実』も脚色されてて、実際はカーネギーホール前でユダヤ人の抗議集会があったのみらしい。


【マダム】 カラヤンて…そんな十字架背負ってたんですか…。じっくり聴いてみよう。

【ヒデ】 ピアフもナチの協力者だったため迫害されたと『愛と哀しのボレロ』では描かれているけど、これは本当かわからない。

【マダム】 ピアフの人生も壮絶ですよね。
それでもというか、だからこその『愛の賛歌』…。

「総合芸術」としての映画

そして、私的クラシック音楽映画の頂点と言ったらやはり、

【ヒデ】 『アマデウスサリエリの映画だよね。当時誰もわからなかったモーツァルトの音楽がいかに素晴らしいか、
音楽に全てを捧げたサリエリにだけはわかる。

その才能しか与えられなかった悲劇。


【マダム】 ラストシーンで、サリエリが精神病院の廊下を行きますよね、車椅子に乗せられながら。
そして恍惚の表情でこう言うじゃないですか、


「全ての凡人よ。


私が許そう。


ありとあらゆるこの世の凡人よ。


私がお前たちを許す」

このシーンで流れるピアノ協奏曲の浄化作用ったらないですね。
私個人として、映画によるカタストロフィーを初めて経験したのが恐らくこのアマデウス


【ヒデ】 僕はケン・ラッセルチャイコフスキーを描いた『恋人たちの曲/悲愴』を高校の時に観て衝撃を受けました。


【マダム】 『恋人たちの曲/悲愴』
eiga.com
は今知りました、相当なエグ味がありそうですねこれは!

【ヒデ】 チャイコフスキーはゲイという設定だったはず。最後は梅毒で死んでいくんだよな〜。

【マダム】 エイズに梅毒。芸術家と性と病気はこれもう三つ巴ですね。


V 2 V

そういやクラシック音楽と映画の金字塔もう一つありました、これを忘れてはなりません!


【ヒデ】 ルートヴィヒ/神々の黄昏?


【マダム】 そうでございます。結局またヴィスコンティに戻って来ちゃった。
ヴィスコンティのバックトゥバック笑。


【ヒデ】 こんなポスターなんだ!
DVD持ってるんだけど。あんまり記憶がないんだよね。ヘルムート・バーガーは美しかった。

【マダム】 ルートヴィヒもゲイでしたね。従姉妹シシー(オーストリア皇妃)への愛が売れ入れられなかった裏返しなのか…

放蕩と贅の極みを尽くし、美貌も精神も崩壊、最期は一人哀しく夜の湖で死んでしまいますね。

彼はワーグナーを敬愛した、
国財を切り崩していくその寵愛の仕方は、極めて内的で、偏執的なものと言わざるを得ません。


誰よりも愛を欲し、何よりも美を理解しようとし、芸術による救済を得んとした狂王ルートヴィヒ2世


ヴィスコンティ伯爵監督が指し示す陶酔への道標は、未来永劫、恍惚の旋律で約束されているというまとめで、締めたいと思います。


『苦悩なき道に歓喜なし』って突き付けられている気がしてならないんですよねぇ、、嗚呼凡人哉。



尚、本作のタイトルバックで流れるのはワグナーの遺作ピアノ曲

「エレジー 変イ長調 WWV93」

このメランコリックなヤバさは必聴。


youtu.be