ヴィスコンティでB2B(Back to Back)
【マダム】 昨日からマーラー漬けです。
グスタフ・マーラーはこの曲を愛するアルマに書きました。あまりにも甘美なこの交響曲は、『ベニスに死す』でも使われています。
【ヒデ】 『ベニスに死す』を観たときに、なんて美しい曲なんだと感動しました。
アルバムも買ったものの結局、アダージョしか聴きませんてしたが。
ジム・ジャームッシュの『コーヒー&シガレッツ』でも使われてました。
クラシックはあまり聴かないけれど、映画でとりあげられたレコードやCDは買ったりしてましたよ。
『ブラームスはお好き』のブラームス交響曲3番、『愛と哀しみのボレロ』のラヴェルの『ボレロ』、
『ヤング・ジェネレーション』の交響曲第4番イ長調『イタリア』、『鬼火』のエリック・サティ。
『地獄の黙示録』の『ワルキューレの騎行』、『恋人たち曲/悲愴』の『ピアノ協奏曲1番』、
『2001年宇宙の旅』の『ツァラトゥストラ はかく語りき』と『青きドナウ』などなど。
映画から教わることはたくさんあります。
【マダム】 へえ!コーヒー&シガレッツでもマーラーが?いい映画ですよねぇ、あれも。
Bull Shit,この雰囲気・・・!
『ブラームスはお好き』は、サガン原作ですね、個人的にサガンの作品の中でも特に好きな一冊です。
って今改めて調べたら、主人公のポールは39歳の設定かぁ、これは響きますね…。
酸いも甘いも嚼み分けた歳上のオジサマ恋人ロジェと、付かず離れずの『自由で気楽な』ー、だけど孤独も漏れ無くついてくる、
あの手の関係を続けてきた39歳独身女の前に、素直でひたむきで可愛い25歳の男・シモンが現れる。
やがて2人は同棲を始めるが、いつしかすれ違ううち、女は元の古巣へ、、
だけどロジェは自分が戻ってくるとわかった途端、火遊びを再開、
去りゆく若き恋人の背中に呟くのは、
「シモン、だって私、もうオバさんなのよ、オバさんなの…」
という、自身への戒めともとれる台詞。
これはヒリヒリする!
2017年のジャポンで読んでも全く遜色ないんですがこれは。
- 作者: フランソワーズサガン,Francoise Sagan,朝吹登水子
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【ヒデ】 遜色ないね。
人間、そして人類のドラマをドライブする「クラシック」
で、『愛と哀しみのボレロ』!
昨年上映してましたよね〜、観たかったなぁ。音楽しか知らないですよ。
プラトーンではバーバーの『弦楽の為のアダージョ』が使われてますね、あの名場面…!
人間と、戦争の愚かしさに胸がかき乱されるあのシーン。
【ヒデ】 大林監督 山口百恵 三浦友和主演の『振り向けば愛』にも、ブラームス交響曲3番が使われてたはず。
『コーヒー&シガレッツ』念のため確認してみたら、マーラーの歌曲「私はこの世に忘れられて」の一節だった。
5番のアダージョだったと思い込んでいましたよ。
プラトーンも印象的だったね。
『愛と哀しみのボレロ』は、グレンミラー、ルドルフ・ヌリエフ、カラヤン、ピアフをモデルにした二世代のそれぞれの物語。
第二次世界大戦を経て、ラストでラベルのボレロで終結するところが感動的です、
これで僕はベジャールの20世紀バレエ団を知りました。
20世紀バレエ団のスーパースター、ジョルジュ・ドンがヌレエフ役をやっていました。
https://youtu.be/zKTwvo8gx68youtu.be
【マダム】… すごい。このダンサー自体がまず素晴らしいですね。魅入られてしまう。
まるで、秘境の地で、絶世期の孔雀が舞っているのを、こっそり垣間見ているような気分。
これがその映画のワンシーンなのね。
途中歌で入ってきたのがピアフ?
ゾクゾクしましたけど。
美しい。。なんと美しいのだろう。。
【ヒデ】 これがラスト。
踊っているのがジョルジュ・ドン、エイズで亡くなってしまいましたが。
このベジャールが振り付けたボレロは、女性も全く同じ振り付けで踊れるようになっています。
ピアフ役をやっているのは、ジェラルディン・チャップリン。
チャップリンの娘なんだよね。
【マダム】 え!これチャップリンの娘なんですか!?色々と凄過ぎ。主役がエイズで死んだ、って、
確かヌレエフ自身もエイズで亡くなってましたよね。
【ヒデ】 あくまでフィクションなんで、現実には一同に会してはいないのですが、ナチに協力したカラヤンが、
戦後ニューヨークでコンサートを開催したとき、ユダヤ人が席を買い占めて、観客がいなかったなどの事実を織り交ぜて作っています。
でもこの『事実』も脚色されてて、実際はカーネギーホール前でユダヤ人の抗議集会があったのみらしい。
【マダム】 カラヤンて…そんな十字架背負ってたんですか…。じっくり聴いてみよう。
【ヒデ】 ピアフもナチの協力者だったため迫害されたと『愛と哀しのボレロ』では描かれているけど、これは本当かわからない。
【マダム】 ピアフの人生も壮絶ですよね。
それでもというか、だからこその『愛の賛歌』…。
「総合芸術」としての映画
そして、私的クラシック音楽映画の頂点と言ったらやはり、
【ヒデ】 『アマデウス』サリエリの映画だよね。当時誰もわからなかったモーツァルトの音楽がいかに素晴らしいか、
音楽に全てを捧げたサリエリにだけはわかる。
その才能しか与えられなかった悲劇。
【マダム】 ラストシーンで、サリエリが精神病院の廊下を行きますよね、車椅子に乗せられながら。
そして恍惚の表情でこう言うじゃないですか、
「全ての凡人よ。
私が許そう。
ありとあらゆるこの世の凡人よ。
このシーンで流れるピアノ協奏曲の浄化作用ったらないですね。
私個人として、映画によるカタストロフィーを初めて経験したのが恐らくこのアマデウス。
【ヒデ】 僕はケン・ラッセルがチャイコフスキーを描いた『恋人たちの曲/悲愴』を高校の時に観て衝撃を受けました。
【マダム】 『恋人たちの曲/悲愴』
eiga.com
は今知りました、相当なエグ味がありそうですねこれは!
【ヒデ】 チャイコフスキーはゲイという設定だったはず。最後は梅毒で死んでいくんだよな〜。
【マダム】 エイズに梅毒。芸術家と性と病気はこれもう三つ巴ですね。
V 2 V
そういやクラシック音楽と映画の金字塔もう一つありました、これを忘れてはなりません!
【ヒデ】 ルートヴィヒ/神々の黄昏?
【マダム】 そうでございます。結局またヴィスコンティに戻って来ちゃった。
ヴィスコンティのバックトゥバック笑。
【ヒデ】 こんなポスターなんだ!
DVD持ってるんだけど。あんまり記憶がないんだよね。ヘルムート・バーガーは美しかった。
【マダム】 ルートヴィヒもゲイでしたね。従姉妹シシー(オーストリア皇妃)への愛が売れ入れられなかった裏返しなのか…
放蕩と贅の極みを尽くし、美貌も精神も崩壊、最期は一人哀しく夜の湖で死んでしまいますね。
彼はワーグナーを敬愛した、
国財を切り崩していくその寵愛の仕方は、極めて内的で、偏執的なものと言わざるを得ません。
誰よりも愛を欲し、何よりも美を理解しようとし、芸術による救済を得んとした狂王ルートヴィヒ2世。
ヴィスコンティ伯爵監督が指し示す陶酔への道標は、未来永劫、恍惚の旋律で約束されているというまとめで、締めたいと思います。
『苦悩なき道に歓喜なし』って突き付けられている気がしてならないんですよねぇ、、嗚呼凡人哉。
尚、本作のタイトルバックで流れるのはワグナーの遺作ピアノ曲、
「エレジー 変イ長調 WWV93」。
このメランコリックなヤバさは必聴。