ヒデとマダムの問わず語り 〜好きにさせてよ〜

とあるアンダーグラウンドなバーのオーナー「ザマさん(ヒデ)」と70年代生まれの通称「マダム」が、アート中心に好き勝手語るバーチャルサロンです。よろしくどうぞ。

アウトサイダーアートの系譜

【マダム】今mixcloudで聴いてる音源のジャケが可愛いんですけど。

ザ・神々の評議会

【ザマ】いいジャケだね。ヘンリー・ダーガーを想わせる。

【マダム】ヘンリー・ダーガー

【ザマ】

【マダム】わ!なんてキッチュ!いいですね〜。

【ザマ】アウトサイダーアートの代表的な画家なんだけれど、生涯孤独で病院掃除夫として一生を終え、自室でヴィヴィアンガールズと言う少女の戦士を主人公にした膨大な物語を描き続け、その作品は死後に大家に発見され世に出た。
女性との交渉もなかった(童貞)ためか、少女の裸体にはペニスが描かれている。
つまり女性の裸を見た事がないのだ。

膨大な妄想世界には圧倒されるよ。

【マダム】今ググッてるんですけど、
この人アスペルガー・童貞・引きこもりの三重苦だったんですね。
キッチュどころの話じゃないわこの人生…。

【ザマ】世界一長い長編小説なんだって。

【マダム】え!ギネスもんじゃないですか。

【ザマ】そりゃ一生かけて書いてるんだからね。

【マダム】絶句…60年近く…もはや日記ですね。

【ザマ】タイトルは『非現実の王国として知られる地における、ヴィヴィアン・ガールズの物語、子供奴隷の反乱に起因するグランデコ・アンジェリニアン戦争の嵐の物語』

【マダム】アウトサイダーでないアーティストなんて、いるのだろうか、ふと。

私自身もどこかしらアウトサイダーの部分を、そうでなけりゃその視点なりを持ち続けていたいと願っているんですが、
狂人の描く世界というのは何故こんなにも中毒性があるのか。


【マダム】ここに出て来るキャラ、
アニメ『イエロー・サブマリン』に出て来るのとソックリなのがいるw

【ザマ】アウトサイダーアートの定義は、
ウキペディアによると特に芸術の伝統的な訓練を受けておらず、名声を目指すでもなく、既成の芸術の流派や傾向・モードに一切とらわれることなく自然に表現した作品のことをいう。
アウトサイダー・アートを作る芸術家をアウトサイダー・アーティストという。

既成概念を覆し新たな視点を提示するアーティストは確かにアウトサイダーだろうね。
一方、アウトサイダーアーティストは精神障害者や、絵の教育を受けていない船乗りのおっさんが突然凄い絵を描きはじめたりする。

美術の歴史を塗り替えるアーティストは探究者であり、アウトサイダーアーティストの絵には精神や欲望の開放を感じる。

凡人の僕らは美を探究する強靭な精神も技術や知識もない。しかしなんらかの精神世界や人には言えない欲望をアートによって昇華できる可能性を、アントサイダーアーティストの作品に見出して共鳴するんじゃないだろうか?

【マダム】ザマさんの解説にぐうの音も出ないわ。

【ザマ】シリアルキラーの作品もやはり大なり小なり自分の持っている闇の部分に共鳴するんだろうね。

【マダム】〉既成概念を覆す
確かに、例えばセザンヌがここで定義されるようなアウトサイダーかって言ったら違いますもんね。
ロートレックはその障害や環境が彼をアウトサイダーたらしめている感はあるけど。

【ザマ】でもロートレックも名声を得ようという強い意志があったんじゃない?

【マダム】あったでしょうね。
両親の離婚、発育しない自身の下半身、父親に才能を認めてもらえなかった渇望が、ムーランルージュ入り浸りの動力となっていたとも考えられるかもしれない。

【ザマ】作品的にはゴッホの方が近いのでは?彼は探究者ではあるが、感情を絵で表現する後に表現主義と言われるスタイルを築いたから。

【マダム】かたや、日本のアウトサイダーアーティストといえば。

【ザマ】山下清
【マダム】ジミー大西。さて判定は。

【O女史】山下清
ジミーちゃんて平成の山下清って言われてたよね。
だから、答えは2人まとめて山下清ということで清にしました。


【マダム】ありがとうございます。
ゴッホはまさにですね。最後耳切っちゃうんだもんなァ。

【ザマ】だよね。生前、絵も1枚しか売れないし。ムンクの叫びもそうだけれど、表現主義アウトサイダーアートはかなり近いよね。

【マダム】うんうん。

【ザマ】違うのは技術かな?

【マダム】生き様?

【ザマ】やはり、探究と開放の違い。

【マダム】アウトサイダーアートはアートという概念すら意識してない作り手が多いですしね。結果的に、終局的にアート枠になったというか。
この見方合ってますか?(やや不安)

【ザマ】あってる。ヘンリー・ダーガーにしても自己の救済の為に描いている。

【マダム】野暮な例えですけど、オノヨーコがジョンと出会った時にNYで展示してたインスタレーションっつーのが、

壁に板貼って、ご覧になった人、自由に釘打ってください、みたいな。

あれを知った時ある意味衝撃で、
「えっ、それもアートか。言ったもん勝ちか」
っていう感想しか、未だに持てない、

【ザマ】オノヨーコはコンセプチャルアートだから、アウトサイダーアートだから全く間逆に位置している。

【マダム】…そうか!!
…長年の喉のつかえが取れました、ザマさんありがとうございます。
そうよね、オノヨーコはお嬢さまだもんな。

【ザマ】デュシャンが便器を逆さに展示して、これがアートだって言った流れに属しているんだよね、ダダイズム

【マダム】例のアレですね。

【ザマ】アレ、反芸術。
芸術や既成概念をぶち壊し観るものに考えさせる。後にボップアートやコンセプチャルアートへ受け継がれるんだよ。

【マダム】確かに、逆さ便器は明確にのちのウォーホールへの道に続いてますね。

【ザマ】まさにね。ジョン・ケージの演奏しないピアノ曲とか。

【ザマ】「4分33秒」というタイトルでした。

【マダム】4分33秒、無音なの?
幻聴が聴こえて来ちゃいそうですね。

【ザマ】ピアノ奏者はピアノの蓋?を開けてストップウォッチを置いて4分33秒演奏せずピアノに向き合うだけ。

【マダム】アーッ!思い出した!

【ザマ】ジョン・ケージで最も有名な曲(笑)

【マダム】曲じゃねーし、みたいな(笑)。

でもこうしてみると、自分はアウトサイダーアートに惹かれるけれど、
同じくらいコンセプチュアルアートも面白いんだってことに気づかされます。

【ザマ】一時コンセプチュアルアートも頭デッカチになり過ぎて行き詰まり、
その反動でニューペインティングが台頭するんだけど、僕はニューペインティングがアウトサイダーアートと共に大好きなんだよね。
やはりペインティングじゃないとダメなんだ。

【マダム】その感覚はわかります。
ニューペインティング。バスキアとか?

【ザマ】そう。映画監督になったジュリアン・シュナベールやデヴィッド・サーレ、横尾忠則キース・ヘリングもか。
そしてヘタウマと呼ばれたイラストレーターや漫画家達が大好きなんだよね。

【マダム】ヘタウマイラストレーターだと、
真っ先に日本の沢野ひとし画伯が思い浮かびます(笑)。

【ザマ】なんといっても湯村輝彦と、
河村要助。

【ザマ】当時ガロがあって、その辺りの漫画家が好きでした。泉谷しげるも漫画やイラスト描いてたけれどいいんだよね。
たけしなんかより断然いい。

【マダム】ガロなんてアウトサイダーアーティストの溜まり場みたいなもんですもんね。

ザマさんの絵も、ガロっぽいですね。

【ザマ】凄い影響受けたよ。

【マダム】私も絵を描くけど、こんな風なのは逆立ちしたって一生描けない!いいなー、アブストラクト描けるの。

【ザマ】ありがとうございます。
子供の時から絵が好きだから、
絵もギターもお店も上手にならないように努力してるのだ。

【マダム】ヘタウマの心得ですわね。

【O女史】ザマさんの描く鳥って、バカっぽくていいですよね。

【ザマ】アホウ鳥。

【マダム】本当に脳みそあんのかな、って感じがいいですよね。ザ・鳥頭。

【O女史】さーて、飲み行きますか!