ヒデとマダムの問わず語り 〜好きにさせてよ〜

とあるアンダーグラウンドなバーのオーナー「ザマさん(ヒデ)」と70年代生まれの通称「マダム」が、アート中心に好き勝手語るバーチャルサロンです。よろしくどうぞ。

快楽の館

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【マダム】どうでしたザマさん?「快楽の館」。

【ザマ】篠山紀信の写真は琴線にふれることはなかったです。
その後に見に行った、恵比寿写真美術館で開催している杉本博司の『ロスト・ヒューマン』は素晴らしかった。
これは絶対に観た方がいいですよ。オススメです。

【マダム】やはりー。原美術館の今回の企画、
「作品をその場に戻す」意図は素敵と思いましたが、ヌードのモデル達が皆今様なのが…
なんというか、芸能人、モデル、ダンサー、綺麗過ぎて。
って私はグーグルの画像検索で見ただけなんですけどね。
快楽の館、っていうから、ナン・ゴールディンみたいな爛れた感じを期待していたんですけど。
現代芸能界に生きる綺麗な20代30代のモデル達をヌードにしたって、所詮その快楽は男性的視点でしかないんだよなあ。
平凡パンチとどう違うの?っていう。

【ザマ】快楽の館のモデルはハズレだったな〜 壇蜜がメインじゃあねぇ〜。

【マダム】成る程ー、それだとかなり固定化された世界感ぽいですね。

「快楽の館」って、元はロブ・グリエの著書から取ってるんでしょうか、
アラン・ロブ・グリエといったら、私が観たくてまだ観れてない映画の一本である「去年マリエンバートで」の脚本を書いたヌーボー・ロマンの作家なんですけど…。
youtu.be

衣装は全編ココ・シャネル、っていう。
ゴージャスとシュールの絶頂っぽい感じに胸躍ります。

尚、タイトル本家著書「快楽の館」のあらすじは以下の通り。

女の肉体に眺め入る。麻薬や人身売買が横行し、スパイが暗躍する英領香港の一郭、青い館が催す夜会。
そこで出会った娼婦を手に入れるため金策に走り出す。一方では老人の不可解な死...あざやかな幻覚が紡ぎ出すエロティシズムの体験。
小説の枠を解き放ち新しい小説の旗手となった、ロブ=グリエの代表作。

快楽の館 (河出文庫 ロ 2-1)

快楽の館 (河出文庫 ロ 2-1)

※補足「去年マリエンバートで」は、黒澤明の「羅生門」に着想を得て撮られたそうです。

と、まあ最初原美術館HPで、「快楽の館」というタイトルを目にした時の期待感と実際の写真を見た時の印象の乖離はなんとも興ざめなものでした。
美しい女優やタレントやモデルに罪はありませんが、このタイトルを意識・またはこのタイトルに惹きつけられる志向としては、
どちらかというと、ナン・ゴールディンが撮るヌード、
またはアラーキーのようなウエットさ、

退廃であったり、

一般の・衰えた・よく磨き上げられている肉体とは真逆の存在・ある種の不具とも呼べる・枠外の、

でもそこにある親しみと愛惜により全てが抱合されているという、
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そういう世界観に冠されてこそではないかという、断固たる価値観があるわけなのですが。


業界でシノギを削る若き肉体を裸にして一等地のハコに飾って、って…


ノーパンしゃぶしゃぶで喜ぶ政治家のノリと何か近しいもの、もしくは美しきマネキン標本といったらいいのか。
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肉薄したものが何もなくて、何が「快楽」か、教えて先生。