自分的映画史上最強の台詞〜ザマさん編〜
【O女史】逗子映画祭、近いのに行ったことないなあ。
ご一緒できたら行きませぬか。
【ザマ】来年ね。
【O女史】えっ、もう終わったの?
【ザマ】日曜までだったね。
【O女史】がーん。。。
【ザマ】最終日はアウトドアスポーツ映画なので僕は全く興味が湧きませんでした。
【O女史】アウトドアスポーツ映画。ボブスレーとか?
【ザマ】ロッククライミングとか。
【O女史】ランボーはスポーツに入りますか。
【ザマ】そろそろね。
(マダム来店)
【マダム】おやお二人さんお揃いで。
逗子映画祭!逆に我が家は日曜日狙いなところもあったんだけど、
予定が入って見送りました。
主催者の野村訓市さん、日曜夜の19時からだったかな、
J-WAVEでやってるラジオをよく聴きますよ。
若い頃から世界中を旅してフェスやパーティにもよく行ってらしい。
選曲言うことなしだし含蓄あるし声のトーンも良いんでオススメです。
ところで今日のお題は
「ザマさん映画史上最強の台詞」
ですね、ザマさん、どうぞ。
【ザマ】台詞は記憶力がないからあまり覚えてないけれど(笑)、好きな台詞は二つあって。
まず一つは『アニーホール』。
ウッディ・アレンの台詞、
「僕のような者を会員にするクラブには入りたくない。
【マダム】ウッディ・アレンて、始め私、
「こんなショボくれたおじさんの撮る映画が面白いの?
しかも自分まで出演?えーー」と思っていたんですが、『アニー・ホール』観た時は、
「うわー!ウィット富み過ぎ!」
と完全にトバされました笑。
観終わった後ウッディ・アレンという冴えないおじさんにすっかり魅了されてしまった笑。
『アニーホール』も、決してハッピーエンドではないんだけど、観た後の変な安心感みたいなのはありますよね。あぁ、こうして皆傷ついてるんだな。
傷つくけど、きっとそのうち忘れて、また恋をするんだろうな、みたいな約束というか。
ウッディ・アレン本人に関しては後年、長らく養女にしていたベトナム人女性と結婚したニュースを見てビックリしましたけどね。。
リアル葵の上(源氏物語)かよっていう。
「僕のような者を会員にするクラブには入りたくない。」って自虐ネタも、ウッディ・アレンならではですね。
ペーソス効きすぎて、他の人なら嫌味になりかねない。笑
【ザマ】ウッディ・アレンの映画の魅力はウィットと自虐ネタと、もう一つ大事な事は彼が死にとりつかれているてとこだよね。
『ハンナとその姉妹』なんてそれが顕著に表れているし、ベルイマンを意識したシリアスな『インテリア』もそうだった。
【マダム】ウッディ・アレンてあんなにお洒落でちょっと不良で、それでいて繊細なのは、彼自身が強烈なタナトスを抱えているからなのか。あんなにヨボヨボ(失礼!)なのに、ニヒルってのもまた、魅力の一つですよね。
そしてやはり才能というのは全てを凌駕し・・・得る。
【ザマ】二つ目の台詞は『男はつらいよ あじさいの恋』で、寅さんが幼い甥っ子の満男にしみじみ言う、
「お前もいずれ、恋をするんだなぁ、あぁ、可哀想に」(笑)です。
【マダム】ヒロインいしだあゆみですね。
また紫陽花といしだあゆみが合うんだこれが!
寅さんなんて素敵な女性に沢山出逢ってその上相手からも憎からず思われ、ハッピーな想いも知ってるけれどやっぱり恋は成就しない、
その報われなさっぷりが出てますね(笑)。
満男にしたら、恋もしてない今から勝手に想像されて同情されて、
「なんなんだ」って話ですけど、あまりに寅さんの情感がたっぷりなんで何も言えない。
「ましてやお前は俺の血を引いてる甥っ子だ。
女に惚れず、失恋せずにいられるか」、
という暗黙の了解も感じられ、これはもはや寅さんの呪詛。
だけれども、例え傷ついたって、恋のヨロコビを知らずしてただ歳食ってくだけじゃつまらねえ、
満男、男なら、恐れず飛び込めよ!
失恋くれえじゃ死にゃあしねえよ!
という、人生讃歌的なメッセージともとれます。
実際満男はその後見事寅さんと同じく、不器用な恋を重ねて、男になっていくんですよね。
しかもゴクミ演ずるヒロイン「泉」の結婚式をぶち壊した罪悪感と恥の意識で死にたくなって、フラフラと沖縄まで行ってしまうという(笑)。
この辺がまた、当時における「もやし現代っ子」の描かれ方かもしれません。
満男の恋と言えば、牧瀬里穂とゴクミ!
画面に出てきた時、その美しさに息を飲む。昭和の美少女、流石の透明感はもう圧巻ですね。
【ザマ】あじさいの恋はいしだあゆみが寅さんの事が好きで、柴又まで訪ねてくるのだけれど、寅さんは何もできない。
満男も一緒に連れて、鎌倉、江ノ島とデートをするのだけれど、話すことすらままならないんだよね、本当に不器用。
八千草薫のマドンナに好きだと言われたときも腰が抜けて、崩れ落ちてるし(笑)
牧瀬里穂もゴクミ演じる泉ちゃんもよかったよね。
渥美清が病でフルで映画に出られない為、満男の恋の比重が大きくなった。
『ぼくの伯父さん』『寅次郎の休日』『寅次郎の告白』『寅次郎の青春』が泉ちゃん4部作と言われていて、満男も伯父さん似で本当に不器用なんだよね。
『寅次郎の青春』東京駅の別れのシーンなんて切なかったなあ。
【マダム】私が寅さんで好きな台詞はこれですね、
「寅さん観よう」と言って、
うちで寅さんを一緒に観る夫婦共通の女友達がいるんですけど(笑)、以前うちの亭主が彼女がまだ独身だった頃、クリスマスプレゼントにこの本をamazonで見つけて贈ったんですよ。
聖なる夜に、彼女と二人でロウソクの灯りの下でめくりながら、思わず笑ってしまったこの頁なんですが。
【ザマ】その本僕も持ってます。
「生きてる?そら結構だ」は寅さんのどの作品?
【マダム】『寅次郎 紅の花』ですね。
寅さんが旅先から柴又「とらや」に電話するシーンなんですけど、おばちゃんとの電話で、
さくらを出せ、おいちゃんを出せ、誰かいねぇのかと攻めて立てた挙句、
誰もいないと答えられて最後
「皆死んじまったのか!」
「生きてますよ!(怒)」
「生きてる!?そらぁ結構だ、俺ァね、…」
と続く。啖呵の抜粋でした。笑
【ザマ】最後の映画だ。
阪神淡路大地震を取り上げていたからね。
渥美清自信自分の死を覚悟していたから、
この言葉はけっこう重く切ない台詞でもあるかも。
【マダム】本当ですね。
この作品もガンが進行して、殆ど座っての撮影だったそうですね。
最後にリリーと喧嘩して、
リリーがタクシーに乗っちゃって、
さくらに追い立てられて寅さんがタクシーの後部座席開けてリリーの横に乗り込むシーンは…
思い出すだけでも鼻にツンと来ますよ!!
【ザマ】「ねえ、寅さん、どこまで送っていただけるんですか?」
「男が女を送るって場合にはな、その女の玄関まで送るってことよ」
ってあのやりとりカッコいいよね。
【マダム】「ほんと?あたしのウチまで来てくれるの!?じゃ運転手さん、金町じゃなくって、沖縄の、アタシのウチまで送ってちょうだい!」
じっと前を見据える寅さんの、腹を決めた表情に、我ら観客の涙滂沱と流れる、ってなもんですよ。
【ザマ】そうそう。
寅さんとリリーって本当いいよね。
【マダム】絶対的なセットですよね。
【ザマ】まさに、
「俺はこの女と生まれた時から運命の赤い糸で結ばれたんだよな なあリリー」
「飲もう 寅さん」
リリーとの4作はどれも大好きです。
『寅次郎 相合傘』では追いかけなかった寅さんが、
ここではリリーをしっかりと捕まえるのが泣けるんだよね。
【マダム】そうなんですよね。
我々も、リリーを追いかけなかった寅さんに対する怒り焦り悔しさに加え、
「でも寅さんだしね」という諦観が、
ここでスッと昇華される。
「飲もう、寅さん!」のリリーのウキウキした声音とか、もう演技の域を超えてますよね。
スタッフキャストの皆さんももしかしたら、
渥美清はもうこの先長くはないかもしれないと思いながら演ってたのかもしれませんね。
やっぱり寅さん最後はリリーだよね、という愛が思いが、画面全体から溢れてくる。
くぅぅーっ!
【ザマ】「寅次郎 紅の花」で浅丘ルリ子は山田洋次監督に、
寅さんとリリーを結婚させやってくださいと頼んだそうだ。
しかし山田洋次は男はつらいよシリーズを後2作作りたかっかために却下された。
寅さんとリリーは結婚できなかったけれど、
男はつらいよシリーズの最後がリリーで終われたのは、本当によかったとみんな思っているのではないだろうか。
【マダム】やめて、ザマさん。また目頭が…(笑)
渥美清もウッディ・アレンも、冴えない風体のおじさん。
なのに、なぜこんなにも私達のハートを魅了するのか。
【ザマ】冴えないおじさんを演じたウッディ・アレンも実生活ではかなりタフな男らしいし、渥美清はプライベートを一切明かさない、ストイックで読書家だたとか。
そういった部分が滲み出て、単なるダメおじさんではなくて僕らを魅力するというのは深読みしすぎだろうか?
【マダム】いいえ、アリだと思いますよザマさん。ウッディ・アレンの名言、
「恋とはサメのようなものだ。常に前進しないと死んでしまう」
こんな台詞も、寅さんが口にしたって何ら違和感ないのだわ。
【ザマ】これも『アニーホール』の台詞ですね。
『アニーホール』の最後に語る卵の話も、いつまでも恋をし続ける寅さんに当てはまる。
【マダム】卵の話って?
【ザマ】『アニーホール』の最後のシーンでウッディ・アレンがニューヨークでアニーと再会し、思い出話に花を咲かせてた後に、あらためて彼女のすばらしさを感じてある小話を聞かせるんですよ。
「ある男が精神医に、自分の弟が自分をメンドリだと思いこんで困ってますと言うと、精神医は入院させろというが男は、
でも卵はほしいんです、と言い返した」
というね。
ウッディ・アレンはこの小話こそが男女の関係と同じだと言い、
「男女の関係はおよそ非理性的で不合理なことばかり、
でも、それでもつき合うのは卵がほしいからでしょう」
と言うセリフで映画が締めくくられるんです。
【マダム】ほー、卵が欲しい、か!
面白いなぁ、子供をもうけるじゃないけど、愛の結晶みたいなものを、
人は胸の内で求めてやまないんでしょうね。
【ザマ】絶対に得ることをできないと知りながらも、僕らはまた誰かを愛してしまう、と解釈してる。
【マダム】やだわザマさん、なんだかまるで寅さんみたいですよ。
本当に男の人って、ロマンチストですねぇ!